家庭菜園における肥料の基礎知識

肥料は原料の種類によって有機質肥料と無機質肥料(化学肥料)に分かれ、肥料の効果の現れ方によって、速効性肥料と緩効性肥料に分かれます。

速効性肥料は、施肥(肥料を与えること)するとすぐに吸収され、施肥の効果が表れますが長続きしません。一方、緩効性肥料は肥料の効き方がゆっくりで、一定期間効果が長続きする肥料です。

肥料の三大要素、窒素、リン酸、カリウムが平均して続く肥料と、特定の成分だけが長く続く肥料がありますので、商品を選ぶ際には注意が必要です。

主に骨粉や油かすなど有機質肥料を指しますが、なかなか溶けない化成肥料も緩効性肥料とよばれます。

肥料の三大要素「窒素・リン酸・カリウム」の特徴

窒素・リン酸・カリウムの肥料の三大要素は野菜を育てるのに欠かせない栄養素ですが、栽培する野菜によって必要な量が異なります。そのため肥料のパッケージには必ずその配合が表記されています。

N=P=K=8=8=8という表示の場合は100gあたり窒素・リン酸・カリウムが各8gずつ配合されているという意味です。

イモ類にはカリウムが多めな肥料を、葉物野菜には窒素が多めに配合されているものなどがあり、「イモ用」などパッケージに記載された肥料が市販されていますので、そちらを使うと便利です。

窒素

葉や茎の生育を促進し、植物を大きく育てる効果のある肥料です。窒素を多く含む有機質肥料には、油かす、魚かすがあります。

リン酸

花や実のつきや質をよくし、根の生育を促進する肥料です。リン酸を多く含む有機質肥料には、骨粉、鶏糞、魚かすがあります。

カリウム

根や茎を丈夫にし、暑さ寒さの耐候性や病害虫の抵抗性を高めます。カリウムを多く含む有機質肥料には草木灰があります。

その他の重要な肥料

三要素に次いで重要な成分に、根の成長を促進し賛成の土を中和する働きのあるカルシウム(石灰)、葉の葉緑素の一成分であるマグネシウム、植物のたんぱく質を形成する硫黄があります。

また微量ですが欠かせない要素を「微量要素」と言い、鉄、マンガン、ホウ酸、亜鉛、銅、モデブリン、硫黄、塩素などがあります。微量要素は必要量が少ないため、施肥量が多すぎると過剰症がでますので運用には注意が必要です。

有機質肥料

有機質肥料は、主に草木、植物油かす、鶏糞、牛糞、魚粉など動物や植物由来の肥料です。施肥後、土中の微生物が肥料を分解した後に植物が吸収するため速効性はありませんが、ゆっくりと長く効き地力を維持できます。また、補給しすぎても肥料やけしにくいのが特徴です。

悪臭がすることや、虫がわくこともありますが、最近はにおいの少ないものもあります。元肥(種まきや苗木を植え付ける前に土壌に蒔く)や追肥(植物の生育に応じて与える)として使われます。

無機質肥料

無機質肥料は鉱物を原料から化学的に反応させてつくった肥料で、化学肥料と呼ばれています。一般的に速効性があり、窒素・リン酸・カリウムの三要素を含んでいますが、不足する成分だけを単独で与えることもできます。

家庭園芸では成分が急激に溶け出さないよう加工した緩効性のものもあります。

臭いはありませんが、多く与えすぎると肥料やけすることがあります。無機質肥料のみを長期間使用すると土がやせてしまうことがありますので、有機質肥料と併用して使うのがおすすめです。

家庭菜園に適した肥料

一般的には肥料や堆肥などを買い揃えて配合し、種まきや苗の植付けの数週間前から準備する手間が必要です。

ホームセンターなどでは、肥料など必要要素が入った培養土が市販されていますので、そちらを使うとすぐに種まきや苗の植付けに取りかかることができます。初心者の方や手軽に家庭菜園をしたい方には、こちらがおすすめです。

ただ、市販の培養土は元から肥料が入っているとはいえ、野菜の実がなってくる頃には肥料も切れてきます。その際は追肥をしてやることで、より実を大きく育てることができます。最初に実がなった頃が、追肥の目安です。

追肥も市販されていて、トマト用、ナスビ用など野菜に合わせた肥料が販売されています。匂いもなく、扱いやすいのでおすすめです。

有機栽培を目指すなら「ぼかし肥」も参考に

ぼかし肥とは、土に肥料成分を入れてぼかす(薄める)ことからぼかし肥料との名前がついたようです。

油かすや米ぬかなどの有機肥料に土やもみ殻などを混ぜて発酵させて作る肥料のことで、窒素・リン酸・カリウム三要素をバランスよく含み、土中の微生物や根に影響を与えるガスが出なくなるまで分解させたものです。

堆肥に比べて速効性があり、液肥よりも持続性があり、元肥にも追肥にも使えるので有機農業に欠かせない万能肥料です。

有機肥料は微生物に分解されることで効果を発揮することから、効き目が現れるまでに時間がかかるとされていますが、ぼかし肥料はすでに発酵しているためすぐに植物に効きます。また有機物を原料としているので肥料効果が長く続きます。

嫌気性発酵によるぼかし肥の作り方

材料は米ぬか・油かす・魚粉・牛糞・鶏糞などの有機物なら何でも利用できます。

最も注意が必要なことは水分含量で、水分含量はできるだけ少ない方が良いです。手で握り固めても、指で押すとぱらぱらと崩れるくらいが丁度いいです。水分が多いと腐ることがあります。

分量は以下の通りです。

米ぬか1袋(14kg), 油かす5kg, 貝化石4kg, 水7ℓ, 発酵促進剤0.3kg
  1. 水以外の材料を混ぜ合わせ水をじょうろで少しずつかけます。材料の乾燥状態によっても水の使用量は異なりますので、必ず手の感触で調整してください。
  2. 材料を混ぜ合わせたら、ビニール袋に入れてできるだけ空気を抜いて密閉し、雨と直射日光を避けて保管します。
  3. 地域によって異なりますが、夏場は1ヶ月ほど、冬場は2~3ヶ月くらいで完成します。
  4. 完成するとヨーグルト臭がしますので、袋から出して乾燥させると半年くらい使うことができます。

注意点としては、ぼかし肥を作るには広めの場所が必要になる点、そして多少臭いが出る可能性がある点が挙げられます。臭いが出ても大丈夫な広めの場所がある場合にお試しください。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする